今回ご紹介する講師は、ボイスカルチャージャパン(株)の代表でもある「加藤 寛理」さんです。
ボイストレーナーと心理カウンセラーとして活躍中の加藤さんに、これまでの活動のこと、教室を開校した経緯をお伺いします。

ーーボイスカルチャー®として活動するまでの経緯を教えてください

元々はシンガーソングライターとして京都・大阪を中心に活動していました。28歳のときに、拠点を滋賀から東京に移しましたが、そのとき、発声の研究をしている方が楽しいことに気づき、ボイストレーナーに転向しました。「トレーナー」というからには、体のことー筋肉や骨格、神経の仕組みから調整・管理まで知っておいた方がいいなと思い、（身体的な）トレーナーの現場にも同時に従事していました。ボイストレーナーというと、発声練習・音階練習・歌唱表現の指導などがオーソドックスだと思いますが、トレーナーの現場で「コンディショニング」という概念を知り、発声についても同様のシステムを取り入れるといいのではと考えました。歌を上手に歌う／言葉や演技を上手に行うといったコーチ的な指導をやめ、大きな声／高い声／音程／かれないなど、スポーツのトレーナーと同様の役割のみを専門として行うことにしました。その集大成として、1回のレッスンで声の悩みを解消しつつ、今後の訓練方針を自分でも考えることができるようになる「発声診断書®」を5年かけて開発しました。

一方、例えば「大きな声を出すときに使う筋肉は問題なく機能していそうなのに、なぜか大きな声が出せない」といった問題もありました。これは身体的な問題ではなく、精神的な問題ではないかと考え、心理学も専攻し始めました。当時、同じ川崎市在住だった木下山多氏が開発されたニュートラルベースNLP®を学び、さらに日本のNLP第1期生でもある田口圭二氏のNLPヒプノセラピー®／◯づけ子育て®なども学びました。その結果、先ほどの大きな声を出したくない理由として、大きな声を出さないことの意図があること、出さないと決めている本人を承認することなどの重要性に気づくことができました。そして今では、普通に精神的な問題・悪習慣の改善などのカウンセリングも行っています。

こうしてボイストレーナーと心理カウンセラーの二足のわらじになりました。自己紹介の肩書きを、ボイストレーナーと心理カウンセラーですと言っていましたが、ちょっと長いなぁ、なんとかならないかなぁと思っていました。そんな折、かつて産業革命・世界大戦前に、発声器官を植物に見立てて、高い知識と観察力と聴力をもって指導していたと言われるボイスカルチャーという職業をしていた人がいたことを思い出しました。当時はまだ無意識という概念すらない時代でしたので、じゃあ現代のボイスカルチャーは、声に関する知識と見立てに加えて、心理をある程度修めた人と定義すればいいのではないかと思い、現代版のボイスカルチャーということで、商標を取得したという経緯です。

ーー彦根市で教室を開こうと思ったのはどうしてですか？

コロナ禍は、全く本業ができない状況が続いていたので、コーヒー事業を行いながらコロナ終息を待っていました。そして、GW明けに5類に移行することが決定され、会社の設立を準備していたのですが、GWに入った矢先、父親が脳梗塞で要介護認定を受けました。いろいろ悩みましたが、このまま東京で仕事を進めるか、親孝行で実家に戻るかー結局は後者を選び、地元で起業することにしました。ちょうど事業を再開する前だったのも大きかったと思います。

滋賀に戻る決意をしてから、東京界隈でお世話になった方々に挨拶に回る中で、素敵な焙煎機に巡り会えたこと、東京で知り合っていた高校の先輩に彦根の人脈を紹介いただけたこと、多くの方々の力を借りながら、母校の近くの綺麗な商店街の一角のテナントを借り、1階は自家焙煎店、2階は教室という形で2023年10月にオープンしました。

ーーこれから、どんなことをしていきたいとお考えですか？

ボイスカルチャージャパン(株)の会社を運営する目的として、モダン・リベラル・アーツ®の推進を掲げています。自分の生業であったボイスカルチャーという仕事と、川崎でのまちづくりで知って事業化に取り組んでいたリベラル・アーツという教養を1つにし、知的生産力を向上させるというプログラムを設計しています。全ての行動の質を上げるために、その前段にある思考や知覚を鍛えるという考え方で、特に知覚を鍛えるために、音楽コンテンツやコーヒーを活用するという方向性を定めました。誰も挑戦したことのないであろうサービスであること、そして初めての株式会社経営、人の雇用など、慣れないことだらけではありましたが、なんとかやれていけそうかなと思っています。加えて、まちづくりで得られた体験や人脈は、今でもかけがえのない財産と感じています。その経験から、商工会議所やライオンズクラブ等への所属、（ゆるキャラの聖地でもある）彦根でのゆるキャラ活動などにも積極的に参画していきたいと思っています。現場、会社、地域。全てを全力で担うことは、そう簡単なことではありませんが、僕の代で土台を作り、ひとまずは上場を目指して取り組んでいければと思っています。