ミックスボイスの目的
歌手や声優、ナレーターなどの養成機関や教室に通われた経験のある方にお尋ねします。
ミックスボイスって聞いたことありますでしょうか?
もしかすると、歌の関連の方は比較的「聞いたことあるよ!」「練習してるよ!」という方が多いかもしれません。
ミックスボイスの一般的な解説は、次のように表記されていることが多いと思います。
地声と裏声の中間のような声で、両者を混ぜることでできる。ミドルボイスとも呼ばれる。
高い音が出せたり、楽に出せたり、表現が豊かになるなど、良いことがたくさんある。
もしもその通りなら、是非とも身につけたい!そう思い、練習している人も多いのではないでしょうか。
しかしながら、本来のミックスボイスとは中間のような混ぜた声ではなく、上記のような練習をしても思うような成果は得られません。かえって混乱する人も多いと思います。
では、本来のミックスボイスとは何か、そして習得することでどんなふうになるのかについて、今回はその概要をお伝えしたいと思います。
- これから声の勉強を始める方
- 声の養成機関等で既に学び始めている方
- 声の表現をもっと高めたいと考えている方
今回の記事の内容を動画でご覧になりたい方はこちらをどうぞ。
そもそもミックスボイスとは何?
ミックスボイスは、地声と裏声の中間のような声…この表現は、大きく間違ってはいませんが、かなり不十分だと感じます。
中間のような声ではなく、地声と裏声それぞれの機能をフル活用する声の方が正しいと思います。中間っぽければ何でも良いわけではなく、地声と裏声を十分に鍛えた上で、融合することで、それぞれの特長が生きることで初めて意味を成します。
参考までに、中間のような声は1分でできます。地声と裏声それぞれの機能をフル活用する声は形が見えてくるまで3年以上かかります。1養成機関で教えているミックスボイスは、基本的には前者です。
ボイトレの最終目標とミックスボイスの位置付け
ボイトレの最終目標はスカフォルディングで、スカフォルディングの形成に必要不可欠なのがミックスボイスです。
フースラーなど発声訓練教師は、喉頭を舞台にたとえ、ボイトレの最終ゴールを弾性的な足場を作ることという表現をしています。弾性的とは、筋肉の張力の回復を指します。力強さもありながら柔軟性もあり、喉頭やそれを支える筋肉たちが自在な位置取りや形状を取れる状態を意味します。
スカフォルディングとは、内喉頭筋群および外喉頭筋群で構成される発声の筋肉たちを自在に使える状態をいいます。
声を楽器(ギター)に例えると、次のようになります。
- 内喉頭筋群:ギターの弦(音を出すはたらき)
- 外喉頭筋群:ギターの弦(音を出すはたらき)
ボディ(音を増幅させるはたらき)
弦の質は、① 内喉頭筋群 ② 外喉頭筋群の一部で決まります。
ボディは、主に外喉頭筋群の働き次第です。
弦とボディを整えていくことで声が充実していきます。
この仕上げに必要なのがミックスボイスという位置付けになります。
ミックスボイスの定義
ミックスボイスとは、
地声と裏声の機能を統合する際に練習する工程で出す声
というのが本来の定義になります。
何か声の武器のようなイメージがあるかもしれませんが、RPG風に例えるなら、ミックスボイスは武器(歌などで使える声)ではなく、レベル上げ(本人の強化)の概念です。
もしもミックスボイスが、RPGゲームでいう装備を整える行為なら、やる・やらないは任意になりますが、もしもレベル上げならやる必要がありますよね。ミックスボイスの習得は、概念的にはレベル上げと同じです。
レジスターバランス
そして、地声と裏声の統合するには、地声と裏声の音量・音域などをとにかく解放した状態にまで高めなければなりません。
分かる人には分かるたとえですが、ドラゴンボールのフュージョンと同じです。同じくらいの強さと体格の者が同じ動作で初めて融合できますよね。
ミックスボイスも全く同様で、同じ強さの地声と裏声が融合することで初めて本来の意味を成します。レジスターバランスの悪い状態で融合させると、かなり不具合が起こります。
ミックスボイスは、地声と裏声の真釣り合わせともいいますが、完成された地声と完成された裏声を綺麗に融合することで、スカフォルディングの形成が実現します。
こちらの動画でも解説しています。
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ミックスボイス習得までの道のり
おおよその行程表
スカフォルディングを形成する工程でミックスボイスを習得するには、次の3つをひたすら繰り返すことになります。
レジスターの分離
まず訓練するにあたって、地声と裏声を分離させる必要があります。
力強さが特徴の地声と柔らかさが特徴の裏声は、筋トレとストレッチの関係によく似ています。
筋トレとストレッチ、同時には行いませんよね。
筋トレは筋トレの時間、柔軟は柔軟の時間と分けて行うのと同様、地声は地声、裏声は裏声で訓練を行います。
レジスターの確立
地声と裏声、練習する内容や時間は、その人の習熟度や現在の状態によって異なります。
共通して言えるのは、弱いレジスターに時間を割いておけば問題ありません。次の工程に行くまでに、レジスターが同じ強さになるように調整します。
レジスターの再融合
地声と裏声をそれぞれ強化したら、融合させます。
このとき行うのがミックスボイスや、ミックスボイスを活用したメニューになります。
そして、また分離して確立して融合して…を繰り返します。
こちらの動画でも詳しく解説しています。
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